「野首教会0823」 298x424mm インクジェット用白フィルムにデジタルプリント |
山岸 俊之展 YAMAGISHI Toshiyuki 2011.03.28(月)―04.02(土) <作家コメント> 長崎県・五島・夏 港でバイクを借りて、教会をめざします。海岸を走り、山を越え、人家は無くなり、道はやがて林道となり、ひょっとして道を間違えたのではないかと迷い始めた頃に、忽然と教会は現れます。 いったいどこから信者の方たちはいらっしゃるのだろうと思いつつ、そうだ、かつてはカクレていたのだと思いあたります。また、そもそも狭い島にやってきた移住者に土地は残されていなかったのかもしれません。 鍵は必ず開けられています。そっと扉を押して中へ入りますと、シンプルな祭壇と公民館のようなスチールのイス、それぞれの方の聖書と賛美歌集。全てきちんと、まるで神社のように整理整頓、清掃されて、先程まで誰かがいらっしゃったような気配があります。 再び外へ出ると、入る時には気づかなかった碧い海が視界いっぱいに広がり、信徒の方と同じ眼を共有した気持ちになりました。 栃木県・足尾・冬 あかがね(銅)色の鉄道に乗って、山をいくつも越えると、白い景色の中にあかがね色の町が現れます。 その町は大きな谷と、速い川で二つに隔てられています。天を突くような高いエントツを持つあかがね工場は対岸にあるのですが、私たちは絶対に行くことはできません。が、ふと谷底を見下ろすと、吹雪の中たくさんのサルたちが順に岩伝いに渡って行くのが見えるのでした。 此岸の家々は黒いコールタールが塗られ、私たちが感じるサイズより二割ほど小さく、同じく二割ほど低い屋根を見下ろしながら路地を歩くと不思議な感覚におそわれます。どの家に人が住んでいるのか、すでにいないのか、かすかな気配が感じられるような、感じられないような、混乱しながら歩いていると、割れた窓ガラスの向こうに生き物の気配を感じたので、そっと、覗くとネコがたたずんでいました。ほっとした矢先、あっ、へんだなと感じ、盲目であることに気づきました。 (2011.2 山岸俊之) →2006年の個展 →2007年の個展 →2009年の個展 →2010年の個展 |
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