なびす画廊

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un oreiller
2015、キャンバスに油彩、117x91cm(F50)

小野寺 潮 展
ONODERA Ushio
2015.10.05(月)―10.10(土)

|作家コメント|

題名について

<un oreiller = 枕>
 枕を高くして寝ると言うのは昔、人が睡眠時に外敵から身を守るため耳を地面に
つけて足音や物音を聞きながら寝ていたことから安心を意味する。語源は神、霊を
召喚するために頭を乗せる「真座」魂の納まる蔵「魂蔵」など説は様々にある。ま
た仏語では耳と枕はほとんど綴りが同じである。人間の五感が分裂的に自律化され、
事物を対象化した表現から半世紀が経つ。むろん、絵を前に耳を澄ませても何も聞
こえてはこない。しかし枕は座布団や柱頭よりもトルソに見える。

<緑色>
「地下鉄の後ろの席で若い男が緑色のものを吐いた。彼は謝りながら、胃液のにお
いで臭くないかと聞いてきた。いや、と答えると彼は次の駅で降り、降りたとたん
また吐いていた。」
胃液というメデュームで油絵具は酸化する。

<銀>
 金箔や銀箔はその反射から屋内での照明効果として在った。銀の室温における反
射率は98%と金属中最大である。電気に代わる以前、月と同様、ローソクや薪が生
む空間においては、影について説明すること、そして影を予測する事すらも極めて
容易だったに違いない。

<カリアテュード>
<カリアテュード>

<non titre>
 絵画の主題は絵画だからこそ何かができる。題名は自分の場合冴えない演出をま
逃れない。メディアはきわどくなければ際立たないので、むしろ読みにくい文字、
見えにくい絵であること。 浮輪の浮力。何かの途中で跡を記す程度の接着力。

<non titre>
 泥に足を取られ、よろけながら田んぼの中に徐々に男が入っていく。ごく普通の
服装だから農家の人ではないらしい。何をしているのか分らなかったので見ている
と、胸には大きなカメラが下がっている。どうも案山子に近づいて行くようだ。た
またま被写体として興味が湧いたのだろうか? もう泥まみれだ。

<P12号の景色>

<ジャガーDタイプ>
 ある母親が子供が幼かった頃遊んでいたミニカーをいつまでもとっておいてある。
老齢を迎え19階の病棟の窓から築地の町並を身を乗り出して見下ろしている。 
「ミニカーが並んでいる。」と息子につぶやいていた。
ーーーーレーシンググリーン

<歩く植物が手をつなぐ>
 壊れたベンチや道端の僅かなくぼみ。落ち葉の影に神が隠れる。
                           2015.9 小野寺 潮



→2004年の個展
→2006年の春のおくりもの展
→2007年の個展
→2010年の個展





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